カイゼン・ジャーニー支援Kaizen Journey Support

自分たちのチームや開発のやり方をより良くしたいという、チームメンバー一人ひとりの感情。
障壁を取り除き、現場や組織の力を高めていきたいというマネジメントの思い。

良い感じの状況にしていきたいという方向性は同じはずなのに。
思いと日常の間の隔たりが大きくなってしまっている、こうした状況は、珍しいことではありません。

これから、一つのストーリーを追いかけてみましょう。

1. 片瀬の憂鬱

私は、片瀬と言います。3ヶ月前まで、あるSIerに所属していたプログラマーです。
あることがきっかけで、事業会社の中でサービスをつくることに関心が高まり、転職をしました。

飲食店の予約ができるサービスをメインとしている、中程度の規模のベンチャーです。
今後は新規事業の立ち上げに注力していくという話を聞いて、私にも新しいチャレンジが出来る機会があるかもしれないと思い、ここへやってきました。

飲食店の予約サービスに携わるチームは複数あり、それぞれのチームにリーダーがいます。

でも、どのチームリーダーもとても忙しそうにしています。実は1つのチームで大小様々な複数のプロジェクトを抱えていて、リーダーはそのすべてを隅々まで見れている訳ではありません。

ある日、げっそりと頬がこけたリーダーに呼ばれて、新しいプロジェクトの立ち上げが必要であり、
私を含めた4人のプログラマーに担当して欲しいという話をもらいました。

1人は、まだ4月に入社したばかりの新人の和田塚さん。私が彼女のメンターにアサインされました。
自分も中途採用でまだ3ヶ月の、ほぼ新人なんだけど…ベンチャーらしく、そのあたりはあんまり関係ないみたいです。

さて、いざプロジェクトの中身を開いてみると、とにかくやることがたくさんで、しかもつくるべき機能の定義もまだまだあいまいです。それに対して、私達はというと、各自でやれそうな機能を取って、とにかく思い思いで開発をはじめている感じ。

毎週、リーダーを含めて定例をやりますが、明らかに進みは遅く。それがまた自分たちの気持ちを焦らせることになり、ますます自分のことに精一杯になっていきました…。

機能定義があいまいなのになぜかやることがたくさん…
やれそうな機能から思い思いに開発するしかなかった。

2. 片瀬の決意

古参のメンバーである2人のプログラマーは、既にどうせローンチをのばすだろうと諦めムード。
2人の雰囲気は、いつものことのようでした。唐突に、私の中で違和感が芽生えました。

皆、こんな進め方ではダメだとわかっている。わかっているけど、こんなもんだと諦めて、いつもの感じで仕事を進めている。成果も、やっぱり大してあがらない。

私が、隣の席に座る和田塚さんにふと目をむけると、彼女は脇目もふらずにコードを書いてました。

一生懸命に時間を注ぎ込んでいるけども、チームにとっての戦力には全くなっていません。
和田塚さんもそのことに気づいていて、さらにPCに齧りつくという様相。

そういえば、最近彼女が発する言葉を聞いたことがないかもしれません。

(あれ?この感じ…どこかで聞いたことがある。)

私は前職で一緒だった同僚のことを、思い出しました。彼が前職の社内勉強会で話していた状況とかなり似通ってました。正直言って、またこの類の問題に遭遇するとは想像していませんでした。

(あの時は、確か新人が辞めたんだっけ。)

またちらっと、和田塚さんに視線を送ってみる。私がもう何度も視線を送っていることすら、彼女は気づきません。私は深く息を吐いて、腹を決めました。
あのとき、同僚は自分からじめてみようって、たった一人でも前に進もうとした。

私もここで、自分からやってみよう。

たったひとりでも、自分から始めてみる。まずは隣のメンバーに声をかけるところから。

3. 会話を取り戻す

さっそく、和田塚さんに声をかけて、彼女を巻き込むことにしました。

まず、お互いに何をやっているかほとんど分からないので、二人で朝会を始めることにしました。
それから、朝会で状況を眺めるために、タスクボード。これもまずは二人で、です。

そして、ふりかえり。もちろん、二人から始める、です。

和田塚さんは、先輩がいきなり変わったことを次々とはじめるようになって、呆気に取られた感じでした。でも、以前よりも彼女の口は開くようになり、声が耳に入るようになりました。

私たちは分かってきました。お互いどんなタスクを持っていて、それが上手く進んでいるのか進捗ダメなのか。

そもそも、一人でタスクを担うには、まだ和田塚さんには足りないものがたくさんあります。

何が出来ればこのタスクは終わるのか?
どこからコードを書き進めたらいいのか?
一つ一つの困惑が彼女の手を押しとどめているようでした。

私達は、ふりかえりのTryでペアプログラミングをはじめることをきめました。

こうして二人でワイガヤやっていると、自然と周りが気にし始めるようになります。なんだなんだと尋ねられて、先輩たちにやっていることを説明する和田塚さんもまんざらではない様子。

言葉を取り戻したのは、和田塚さんだけではありませんでした。自分のことに精一杯だった私達チームに会話が戻ってきました。

和田塚さんとのタスクボード。まずは二人で朝会を始め、状況を眺めることにした。
チームにも会話が戻ってきた。進捗の話だったり、技術の話だったり、今日のお昼ごはんの話だったり…

4. スクラムマスターとの出会い

その様子を眩しそうにみていたリーダーも歩み寄ってきました。良さそうな取り組みだねということで私と和田塚さんでどんどん進めて行って欲しい、と。
和田塚さんは、元気いっぱいに良い返事をするけれども、私ははたと気づきました。

(チームで、開発を進めていくためにはどうしたら良いだろう)

私達は、まだ寄せ集めの、チームになれていない集まりでしかありません。
チームビルディングが必要なのだと思います。その上、チームとしての開発プロセスも整える必要があります。

私には、まだチームをリードをした経験はありません。

前職の同僚も、苦労していたことを思い出しました。私は少し悔やみを覚えました。彼の活動を見届けることなく、私の方が会社を出てきてしまったのです。

和田塚さんと、他のメンバーが、期待の目を私に向けてきます。何から始めましょう、モチベーションの高さがひしひしと伝わってきます。この期待を台無しにするわけにはいきません。

私も、チームビルドのためのワークショップをいくつか知っています。やったことはありませんが。
何から始めるべきか?プロジェクトが止まっているわけではありません。時間も限られています。
果たして、やったこともないことをいきなりやって上手くいくでしょうか。

ぐぬぬと言葉を失う私をみかねたのか、リーダーが代わるように答えました。曰く、これから本格的にチーム開発に取り組んでいくにあたっては、経験豊かなメンターによる支援が必要だろう、と。

会社で業務委託として契約しているフリーランスのメンターがいて、ちょうどその人の稼働が空き始めているので、こちらのチームに来てもらうことにするという。

やがて。私達に忍び寄る影。

あごひげをさかんに触っている、黒ぶち眼鏡の男。

「えらい遅くなってすみませんな。」

スクラムマスター 西方

5. チームビルディング三種の神器

西方さんというメンターは、さっそくチームビルディングについて教えてくれました。

チームビルディングの三種の神器ともいうべきワークがあって、それぞれ、「インセプションデッキ」「ドラッカー風エクササイズ」「星取表」という。

インセプションデッキプロジェクトやチームの目的や指針を明らかにする
ドラッカー風エクササイズチームメンバーの価値観を明らかにする
星取表目的を達成するために必要なメンバー各自のスキルを明らかにする

私達はこの3つのワークショップに取り組んだ上で、スクラムで開発を進めることにしました。

もちろん、西方さんにスクラムマスターとして、がっつりと関わってもらってです。

私達にスクラムの経験はありません。最初、そんな私達で大丈夫だろうかと和田塚さんが不安がりました。

また、置いて行かれてしまうような、ツライ日々になってしまわないかと思ったのでしょう。

西方さんは言いました。
「そんなこと言うたら、一生スプリント始まらへんで。」
確かにそうです。私達はいつかは前に進まなければならないのです。そのいつかって、いつでしょう。
いつかを決めるのはリーダーでも、西方さんでもありません。僕たち自身です。

自分たちで経験したことを重視するスクラムだからこそ、やってみてそこから得られたことを学びにして次につなげていく。その繰り返しで、少しずつチームとしての練度を高めていく。

最初から大いなる成果があがるわけではありません。そういう認識で、チームがスタートラインに立ってやっていくんだ、ということが皆の共通理解になり、和田塚さんも不安が晴れたようでした。

やっとチームがスタートラインに立ったんだ、ということが皆の共通理解になった。

ここにあげた三つのワークのやり方は書籍カイゼンジャーニーをあたってみてな。
前提として、何か取り組むときは誰だってたいてい初めてだったりするもんや。自ずと試行錯誤しながら取り組むことになる。
だからこそ、私のようなメンターが関わって必要に応じて皆をファシリテートし、致命的な失敗にならないよう下支えしていくんや。

6. 西方の背中

スプリントによる開発をやりはじめて、数ヶ月。少しずつ私達は新しいやり方を会得していきました。

そんなとき事件がおきました。ある役員がチームのところに乗り込んできたのです。

私達の会社はまだベンチャーです。役員とはいえ、現場との距離は近く、開発担当の彼は私達のチームの進捗があまり進んでいないように見えることに我慢の限界がきて、直接問いただしにきたのです。

まず、リーダーが矢面に立たされました。なぜ、このチームの開発は遅れているのか。なぜと問われてリーダーはスクラムをやりはじめて、まだチームの練度が高いわけではないので、このくらいの進みにはなりますよ、と説明しました。

だったら、スクラムなんてやめてしまえ、と役員の温度感は高まる一方です。

すっかり、身を固くしてしまったのは、和田塚さんに限らず、私も含めてチーム全員でした。

手応えを感じ始めていたスクラムをやめなければならない。私は、喉から何かこみ上げてくる感じがしました。

そのこみ上げるものを、その勢いのまま言葉にしようとした私の目の前に、突然、人が立ちました。

西方さんでした。

西方さんは、丁寧な口調で役員に問いかけました。
「このプロジェクトでどんなプロダクトバックログを扱っているのか挙げてみてください。」


役員は一つ二つ、やりたかったことを挙げましたが、ふわっとした内容でしかありませんでした。

それはそうです。このプロジェクトは何をやるべきかがあいまいなところから始めているのです。

インセプションデッキやプロダクトバックログの手入れを通じて、少しずつ具体化できてきたのです。役員も自分の言葉を自分の耳にして、状況を思い出したようです。最初の勢いがなくなったように見えました。

その様子を見て、落ち着いた調子で、西方さんは言いました。

「何をつくるかわかっていないのに、いつまでに終わると誰が言えるでしょうか」

私は、スクラムマスターの背中をみました。ひょろっとして細い背中がそこにありました。それなのに、なんて心強いんだろう。私も、こうありたい。

現場も、経営者も、皆、世の中に必要とされるプロダクトを少しでも早く届けたいという思いは一緒です。

ただ、状況の理解が共通になっていなかったり、会話するための語彙や勇気がなかったりで、ずれが生じているだけなのです。

こうしたずれを明らかにして、合わせていくための活動と、そのための引き出しが必要になるのです。

私はこのプロジェクトを通じて、西方さんからたくさんのことを学び、また、その次へと繋げることにワクワクしはじめていました。

このストーリーでは、片瀬が一歩踏み出したおかげで、チームが動き、リーダーが動き、それがメンターとの出会いに繋がり、経営との意思疎通へと発展しました。

誰もが現場やプロダクトづくりをより良くしたいと考えているものです。たった一歩の歩み寄りが足りないだけで混乱してしまうのは、よくあることです。その一歩がとてつもなく遠い場合もあります。

皆さんの現場や組織はいかがですか?

わたしたちにできること

現場や開発を変えていくのはジャーニーといえます。


いきなり理想のゴールにたどり着けない。向かいたい方角に向かって歩みを進めていく。

では、そのステップをどう踏んでいけば良いか。
一人からはじめて、チームとして進んでいくためにどうするのか。

さらに、それを組織的に取り組むためには一体どうしたらいいのか。

私達が関わってきた現場で、何度もかけられてきた問いです。

現場や組織それぞれが置かれている状況、チームの練度によって、トライの仕方は様々です。

経験をもとにチームが強くなっていくための最初の一歩を支える役割や、スクラムに則ったチームの活動(組織で取り組むなら複数のチーム)を支援する役割が必要になったら、私達に声をかけてみてください。

これまで数多くの現場に在り、幾多のチームを支えてきた私達が力になれるかもしれません。

皆さんの現場が良い感じになりますように。それでは、良いジャーニーを。

カイゼン・ジャーニーをリードしていくメンバーたち

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